【長編】ホタルの住む森
学校から帰ってから退屈だった晃は父の仕事について大学病院へ来ていた。
だが、父の仕事は思った以上に時間がかかり、かなり退屈していたのだ。
しょっちゅう父と病院へ来ている晃は、看護師や長期入院している患者とも顔見知りだ。
今日も退屈していた小児病棟の少年に捕まり、暫く相手をしていたのだが、七夕という事もあり病棟でイベントが始まった為、健康な自分がその場にいてはいけないような気がして誘いを断ってきたのだ。
重い病を抱え小さな体で必死に戦っている、自分と同じ位の年や、もっと小さな子どもたちの姿を見ると、晃はいつも胸が痛くなる。
自分もいつか、祖父や父のように医者になるのだろうか…。
彼らに元気になって欲しいとは思う。
だが、どうしても医者になり彼らを治す自分をイメージすることが出来なかった。
もしかしたら自分は医者には向いていないのかもしれないと思う反面、幼い頃から神童と呼ばれるほどに優秀だっただけに、周囲は当たり前のように期待をする。
それが晃には重荷でもあった。