【長編】ホタルの住む森
「七夕だって、私の願いを叶えてなんかくれないもの。
お願いを書くだけ無駄よ。」
少女は大きな瞳を潤ませ、こぼれんばかりの涙を浮かべていた。
「私ね、何度も入院しているの。
先生は元気になれるって言ったけど、本当は知ってるの。
…私ね、10才まで生きられないんだって」
潤んだ黒目は真っ直ぐに自分を見つめていた。
痛々しいほどに思いつめた瞳に、晃は言葉を失った。
「だから、先生から逃げてきちゃった。
きっと今ごろ探していると思う」
ちろっと小さな赤い舌を出していたずらっ子のように笑ってみせる。
その笑顔には、先ほどの思いつめた表情は無かったが、明らかに無理をしていた。
「だ、だめじゃないか。すぐに戻らなくちゃ!」
晃は慌てて少女の手を取り、病室へ戻ろうと言ったが、少女はゆっくりと顔を横に振った。
「いまさら先生に診てもらっても命の長さは変わらないよ」
「そんな事・・・だって先生が治るって言ったんだろう?
10才まで生きられないなんて誰がそんな事・・・」
「先生がパパとママに話しているところを、こっそり聞いちゃったの。
このままだと、10才までもたないって」
何もかも受け入れたような諦めの表情で、必死に微笑もうと口元に笑みを浮かべる彼女を見ていると、言いようの無い感情が込み上げてきた。