【長編】ホタルの住む森
帰りの車の中でぼんやりと車窓から雨雲が消え始めているのが見つめる。
あの娘の名前聞かなかったな…と、ぼんやりと思い出した。
でも、僕には分かる。
いつかまた、もう一度出逢えるって、確信がある。
名前なんか知らなくても、僕らはいつかまた必ず巡りあうはずだ。
車窓から空を仰ぐと、雲の切れ間から赤くなり始めた夕日が光の筋を書いているのが見えた。
――――いつかきっと会おう
七夕の今夜、天の川に誓うよ。
僕は医者になって必ずもう一度君に会う。
名前も知らない紫陽花の精
その日まで、決して枯れないで…
僕が大人になるまで、信じて待っていて…