【長編】ホタルの住む森
「お母さん、私、絶対に死なない。
彼が私を治してくれるって約束したの。
私はそれまで生き続けて約束を守らなくちゃいけないわよね」
母は大きく目を見開いて、それから目に涙を浮かべながら、ゆっくりと崩れるように笑顔を作っていった。
「そうね・・・約束はちゃんと守らなくちゃね。
いつかあの子に治してもらおうね。茜」
ニッコリと笑う茜の笑顔は、雨の上がった空の雲の切れ間から差し込む夕陽に彩られた。
うん、いつかまた、きっと出会えるよ―――
七夕の今夜、天の川に私の願いはきっと届くから…
銀の雨が優しく降る日は、遠い記憶が目を覚ます
それは紫陽花が見せた夢
遠い遠い記憶に眠る、優しい優しい思い出のかけら
美しく咲く紫陽花が銀の糸降る午後に見せた夢
** 銀糸の午後 紫陽花の夢 Fin **