世界でふたりだけの…
序章
今まで生きてきた中で、私はいつでも冷静沈着だった。
両親が何の相談もなく離婚した時だって、母の再婚相手が10歳以上年下だと分かった時だって、そんなに驚かなかった。
友達からもよく言われていた。
「澪(みお)ってすごいよね。」
「何が?」
平凡でのどかな昼休み。
いつものように友達4人、学校の屋上で昼食を食べていた。
「だってこの前のテスト!ひとりだけ5教科全部満点だったじゃない!」
「別にすごくないよ。ただいつもより勉強しただけ。」
大好きな天むすを頬張りながら、茶髪でセミロングの雪に答えた。
「そこじゃなくて!」
ポニーテールの紫乃(しの)が首をかしげている。
ストレートロングで黒髪の琉美(るみ)が、お茶を飲みながら雪を見つめる。
「じゃあどこ?」
「だって澪、全然喜んだり驚いたりしないんだもの。」
雪が私の方に体を向けて強気に言う。
「確かに、澪の驚いた顔は滅多に見ないわね。」
紫乃が口をはさんだ。
「あまり自覚ないけど、よく言われる…。」
「でしょー!?」
雪が紙パックのお茶を私に向けて叫んだ。
紫乃と琉美は“うんうん”と頷いている。
「つまり…それって、めちゃくちゃ冷静ってことよね。」
「いいなー。私なんかすぐビクついちゃって、パニックになるもん。」
紫乃と琉美が交互に言った。
少し羨ましそうに言うふたりの感情が、いまいち理解できなかった。
冷静でいられることが、そんなにいいことだとは思わなかったから。