世界でふたりだけの…
「お母さん…!?」
その女性は私の母だった。
さっきは気付かなかったけど、美和は母の名前だ。
「美和さん、本当にいいんですか?」
木崎が心配そうに聞いている。
母は強い眼差しで木崎を見つめた。
「いいんです。私にはあの子しかいないんです…!」
何の事を言っているのかよく分からないけど、なぜか恐怖感が私を襲った。
身体が震えている。
「気持ちは解りますが、成長と寿命が…。」
念を押すように深樹が言う。
「解ってます。でも、あなたも同じ事をしたのでしょう?深樹さん。
その言葉に深樹は苦笑いをした。
そして軽くお辞儀をして、その場を去った。
深樹の後ろ姿を不安そうな顔で見送った木崎。
「美和さん、深樹はたぶん自分と同じ思いをさせたくないんだと思いますよ。」
「ええ、あの人は本当にやさしい人だから…。だから、弟さんは幸せだと思うわ。あの子もきっと解ってくれるはず…。」
その時、母の目には涙が溢れていた。
そんな母を木崎は慰め、また来週来て欲しいとだけ伝えて、深樹の後を追った。