世界でふたりだけの…
また砂嵐が流れ、場面が変わった。
次はどうやら母が頼んだモノが出来上がり、それを渡す日のようだ。
つまり、さっきの場面から木崎が告げたちょうど一週間後。
「とうとうできたのね…。」
ロビーで母は目を輝かせ、木崎に別室へ案内されていく。
頭が痛い。
なぜか、知りたくないのに知りたい衝動にかられる。
恐い。
母が案内された部屋は、一番最初に私が見た部屋。
深樹がそこで待っていた。
中央の寝台には…
「私がいる…。」
そう、寝台には白いワンピースを着た私が座っていた。
「澪…!」
母は嬉しそうに私に抱きついた。
「記憶処理は終わっています。帰ったら起動を…してください。」
起動ってどういう意味…?
記憶処理ってなに…。
「本当に、ありがとう…!」
「いえ、くれぐれも強い衝撃などに気をつけて…。」
母は深樹と木崎に深くお辞儀をし、私と一緒に部屋から出て行った。
「なぁ深樹。旦那さんは賛成してなかったんだよな…?」
木崎は不安そうに呟いた。
「ああ。無理もないだろうな…。自分の娘が、たとえ生き延びるためとはいえ…」
「アンドロイドになるんだもんな…。」
深樹の言葉を木崎が受け継ぐ。
アンドロイドって…?
私は…どうなったの…。
「でも、もしあの子がこの事を知ったら…。」
「自分を信じることができれば大丈夫だよ。きっと。」
深樹が木崎の肩に腕を回した。
目の前が真っ暗になり、光が私を包んで意識を消していく…。