世界でふたりだけの…

「はい。私達からのプレゼント。」

そう言って私が渡したのは、優羅が見つけた銀の燭台。
母と優さんは嬉しそうにそれを受け取ってくれた。
私は最終的にケーキと燭台、両方ともプレゼントすることにした。

「ケーキは俺と澪で作ったんだ。スポンジは買ったけど。」

笑いながら言う優羅に、母が抱きついた。

「ありがとう・・・!澪も!」

次いで私にも抱きついてくる。
なんだか照れくさくて、動けなかった。

さあ、言わなきゃ。
私の口から。
私の声で。

「おめでとうお母さん。・・・お父さん。」

ずっと抱きついていた母が、ガバッと勢い良く離れた。
目が驚きで見開いている。
優さん・・・いや、父は一瞬何が起こったのか分からないように、きょとんとした顔をしている。

「澪、今お父さんって・・・、お父さんって言った!?」

母が私の肩を掴み、がくがく揺さぶりながら叫ぶ。
父は・・・泣いていた。

「やっぱり泣いたな。」

優羅が楽しそうに笑っている。
母はもう一度私を抱きしめた。
さっきよりも強く、肩を震わせながら。

この時気付いた。
自分の言葉や行動で誰かが笑ったり、喜んでくれる・・・。
それがすごく嬉しくて、すごく・・・幸せだってこと。

それからみんなで夕食を作って食べた。
今までで一番楽しくて、たくさん笑った。
父と母は寝室のサイドテーブルに燭台を置いてくれた。

「ありがとう・・・お母さん、お父さん。」

私はそう言って自分の部屋に入った。
なんだか泣きそうで、早めに布団に入って目を閉じる。
どうして泣きそうなんだろう。
胸が嬉しい気持ちで締め付けられてる。
自然と笑顔になって、眠りに落ちていった。



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