世界でふたりだけの…
初恋とエプロン
月曜日の朝。
学校の教室に入るなり、紫乃が駆け寄ってきた。
「澪―!どうだった?この前行ってきたんでしょ?魔法のお店!」
息を切らせながらはやし立てる紫乃をなだめる。
とりあえず私の席に向かい、座らせた。
「行ってきたよ。」
机の横に鞄をかけながら言う。
同時に鞄から2冊の本も出した。
「何買ったの?店長、かっこよかったでしょ!」
私は本を机の上に置き、苦笑した。
「かっこよかったかは分からないけど、この本を借りたの。今日の帰りに返しに行くつもり。」
「借りた?高そうな本だから、買えないと思われたのかな。あれ、何も書いてないよ?こっちの本も。」
紫乃が白い本と黒い本を交互にぱらぱらとめくっていく。
「ねぇ紫乃。あのお店、本当に魔法のお店だね。」
私がくすくす笑いながら言うと、紫乃は不思議な顔で見つめてきた。
「澪・・・変な魔法でもかけられたの?」
「ぷっ!あははは!!」
真剣にそう言われ、思いっきり吹いてしまった。
「なによう!やっぱりどこか壊れちゃったんじゃないのー?」
ふて腐れて言う紫乃に、まだ止まない笑いを堪えながら言った。
「壊れてないよ。むしろ調子が良いくらい。ありがとね、紫乃。」
お店を紹介してくれたこと、ほんとに感謝してる。
知らないままだったらきっとこの2冊の本にも、深翠さんにも出逢わなかった。
紫乃が“澪が変だぁ!”と叫びながら、雪と琉美の所に行くのを見て、私はまた笑った。
なんだか楽しくて仕方がない。
これも、深翠さんとこの本のおかげ。
今日深翠さんに会ったらお礼を言わなきゃ。
それと、気になってることも。