世界でふたりだけの…
母が再婚して新しい父親ができ、ずっと欲しかった兄もできたけど、私は馴染めなかった。
新しい兄・優羅(ゆうら)はとてもやさしく、暖かだった。
父・優(まさる)さんも同じだ。
母と10歳以上の年の差を感じさせないほどに大人びていて、私を実の娘のように慕ってくれている。
だけど私の心は未だについていけていない。
感情では仲良くしたいと思う反面、心では所詮他人なんだと嫌な思いが渦巻いていた。
もうすぐ再婚してから1年が経つ。
母がお祝いをしようと、優さんと一緒にはしゃいでいた。
その姿を見て、私は1年経った今でも優さんを“お父さん”と呼べない自分に腹が立った。
兄は名前で呼んでいいと言ってくれた。
その笑顔が優しくて、素直に“優羅”と呼ぶことができた。
私は知ってる。
母が、私が“お父さん”と呼ばないことを優さんに謝っていたことを。
優さんは微笑んで母を慰めた。
とても悲しかったのに、なぜか涙は流れなかった。
でもその場に留まることができず、自分の部屋へ駆け足で階段を上った。
私の家族は暖かい。
幸せで、文句の付け所がない。
でも私は、なぜこんなに疎外感を感じるのだろう。
私は、わたしが解らない……。