世界でふたりだけの…
「私、嬉しいです・・・。私も自分がアンドロイドだって分かった時、全てが信じられなくなりました・・・。でもあの光の本を読んで・・・今深翠さんの話を聞いて、私は独りじゃないって思えたから・・・。」
涙でつっかえながら、精一杯言った。
私の気持ち、感じたこと。
「澪ちゃん、それは僕も同じだよ。僕が兄さんに壊してって言った日、美和さん・・・君のお母さんがぼろぼろになった君を担いで研究所に来たんだ。そして澪ちゃんもアンドロイドになるって話になった。」
深翠さんは私を離すと、カウンター前の椅子に座らせてくれた。
涙は止まったけど、恥ずかしくて顔を上げられない。
「僕は反対したんだ。僕と同じ思いをさせたくないって。それは兄さんも同じだったけど、美和さんが聞かなくて。私の娘を助けてほしいって、必死に木崎君に頼んだらしい。そして手術が決まって、今の澪ちゃんになった。」
そう言って私を見つめてくる目が優しくて、また涙が溢れそうだった。
「兄さんがね。澪ちゃんは自分のことで悩む時がきっと来るから、その時はお前が助けてあげなさいって、僕にこの2冊の本をくれたんだ。」
びっくりした反動で顔を上げ、深翠さんと目が合った。
変わらずに、優しい目で私を見つめ返してくる。
「そう、この本は君専用だったんだ。いつか必ずここに来ると思って、兄さんが用意してくれたんだよ。澪ちゃんのために。」
私専用・・・。
それを聞いてなんとなく納得した。
あの夢のような出来事も、アンドロイドである私だから見ることができたんだ。
「あのしおりは・・・?」
「あれは僕が描いたんだ。君宛てに。」
なんとなく照れたように言う深翠さん。
それを見て、私は嬉しくなった。
「深樹さんも同じこと言ってたから、てっきりしおりもそうなのかと思いました。」