世界でふたりだけの…
魔法のお店
何事もなく学校が終わり、帰りの支度をしていた。
「ねぇ澪。魔法のお店って知ってる?」
突然紫乃が話しかけてきた。
紫乃は噂話が大好きなのだ。
「魔法のお店…?どうせただの噂じゃないの?」
「違うんだって!私行って、実際に見てきたもん!」
私の言葉に目を大きくして反論する紫乃。
先月の学内ミスコンで見事準グランプリを獲得した。
その可愛い顔の頬をぷくーっと膨らませている。
「へー。どんなお店?」
心なしか興味をそそった。
魔法とか信じる性質じゃないけど、最近これといった刺激もなかったから。
「あのね、そのお店は来た人の今1番必要としてるモノを与えてくれるんだって。私が行った時は、ノートとシャーペンだったの。」
紫乃が少しふて腐れたように、自分の買ってきたものを見せてくれた。
私は黙ってそれを見つめる。
「…これで勉強しろだってさ。」
「ぷっ!」
思わず笑ってしまった。
今月のテストで初めて赤点を取ってしまったと、うなだれていた時の紫乃を思い出してしまったから。
「ひっどーい!笑うことないじゃない!」
紫乃は顔を赤くして私の肩をぺしぺしと叩いてきた。
「ごめん紫乃。でも本当に今必要なモノをくれるんだ…。」
「そうなの!しかもね、これで勉強すれば、成績が上がるって言ってたの!」
目をキラキラさせて、ノートとシャーペンを見つめる紫乃。
「それは胡散臭そう…。」
さすがにそこまでは信じられない。
でも紫乃は再び頬を膨らませた。
「そんなことないもん!絶対次のテストでは成績が上がるはず!店長かっこよかったし!」
自身満々に言う紫乃。
騙されてるんじゃ…。
店長とテストは関係ないし。
見かけより少し中身が幼いから、うまい話と容貌に乗せられて買わされたのでは…。
「で、紫乃。そのお店どこにあるの?」
「えっ、澪興味あるの!?珍しー!」
確かに興味はあったけど、もし本当に紫乃が騙されたのなら講義をせねば。
そんな考えの方が、今の私には強かった。