世界でふたりだけの…
店長と変な本


噂の魔法のお店に来てからほんの1時間。
私は店の奥にあるキッチンにて、夕飯をご馳走になっていた。

「ふぅ、お腹いっぱいになった?」

先ほど自分が作ったスパゲッティを一皿平らげ、満足そうな店長・深翠(みすい)さんは聞いてきた。

「……はい。ごちそうさまでした。」

悪いとは思うけど、母の手料理より美味しかった。

「元気ないけど、口に合わなかったかな。」

心配そうに私を伺う深翠さん。私は両手と首を横に振った。

「いいえ。とっても美味しかったです。」

そう言うと嬉しそうに微笑んで、“それはよかった”と言ってお皿を片付け始めた。
私も手伝いながら、ずっと浮かんでいた疑問に悶々と悩み続けていた。

「どうした?眉間にしわが寄ってる…。」

指を自分の眉間に当てながら、私の背に合わせて屈んでくる。

「いえ…、このお店はお客さんに、今必要なものを与えてくれるって聞いて来たので、今の私にはそれがスパゲッティだったのかなぁって…。」

呟くように言うと、深翠さんは声を上げて笑いだした。

「そっかそっか、ごめんね。違うんだ。ただちょっと作りすぎて、そこへちょうど君が来たから食べてもらったんだ。」

深翠さんは言いながら、楽しそうに食器を洗い出す。

「大丈夫。ちゃんと後で君に必要なものを渡すよ。でも、普通の人とはちょっと違うものだからね…。」




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