世界でふたりだけの…
私はほっとしながら、新たな疑問を思い浮かべる。
「普通の人とは違うものって…?」
深翠さんの後姿を見ながら、なんとなく確信した。
紫乃は騙されたわけじゃないって事。
理由は分からないけど…ただ、そう思った。
食器を洗い終えた深翠さんに、再びお店の中へ誘導された。
今度こそ、私に必要なものを渡すといって。
「ここでちょっと待っててね。」
それだけ言うと、私をカウンター前の椅子に座らせ、深翠さんは奥にある物置らしき場所へ消えていった。
しばらくして深翠さんは2冊の本を抱えて戻ってきた。
「これだよ。今の君に必要なもの。」
そう言って差し出したのは真っ白な本と、真っ黒な本。
表紙には白い本に『Right』、黒い本には『Dark』と書かれている。
「光と、闇…?」
「そう。これは読む人の光の部分と、闇の部分が読める本なんだ。読む順番はどっちからでもいい。でも、大抵は闇の方から読むね。」
私は説明を聞きながら、白い本をパラパラとめくってみた。
しかし、中には何も書かれていない。
「闇を先に読んで落ち込んでも、後に光を読めば気が楽になるだろ?」
「あの、何も書いてないですよ…?」
ほら、と本の中身を見せながら聞いてみた。
「あぁ、それ読む時間が決められてるんだよ。」
「読む時間が…決められてる…?」
「うん。闇の本は夜の12時から2時までの間に。光の本は朝の6時から8時までの間に。2冊とも2時間しか読めないけど、一度で全部読めるから心配はいらないよ。」
にっこり微笑んで言う深翠さん。
私はちんぷんかんぷんだった。
「とにかく、その時間に読めばいいんですね。」
「そう。で、読み終わったら返しにくること。ついでに感想も聞かせてほしいな。仲間なんだし。」
何の仲間なのか分からないけど、とりあえず私は2冊の本を鞄にしまってお店を出た。