世界でふたりだけの…
闇の本
家に帰ってからというもの、私は妙にそわそわしていた。
早く本を読んでみたくて、気持ちを抑えきれずにいたのだ。
夕食も、いつもの倍の速さ食べ終え、さっさと自室へ戻り、闇の本をベッドに横たわりながら眺めていた。
夜中の12時を回らないと読めない“闇の本”。
早く、読んでみたい。
待ちわびた、夜中の12時。
時計の針が全て12の位置に重なった時、私は気持ちを落ち着かせながら、闇の本を開いた。
「…?」
本の中は確かに、お店で見たときより変わっていた。
でも文字がない。
ただ、ページ全体が真っ黒になっている。
「なに、これ…。」
次々にページをめくってみても、一向に文字が見えてこない。
いつまでも真っ黒なままだ。
「意味わかんない…。」
ちょうど半分くらいめくったところで、本を閉じようとしたその時。
「っ!?」
本の中央から光が輝きだした。
それは瞬く間に広がり、光はいつしか私を包み、それと共に私の意識も消えていった。
ベッドに残ったのは、中身が真っ黒な一冊の本だけ。