世界でふたりだけの…
体が軽い。
それになぜか浮遊感もある。
閉じていた目を開けると、私は実際宙に浮いていた。
どこかの建物の中、その一室だと思われる場所を見下ろすように。
部屋の中を見渡すと、中央に大きな寝台のようなもの。
その真上、周りには精密機械。
そして1人の男性。
20代前半だと思う。
なぜだろう。
あの顔に見覚えがある。
無意味な丸い大きな伊達眼鏡に、ダボダボの白衣。
懐かしいような、恐ろしいような。
不思議な感覚。
そこへもう1人男性が入ってきた。
「あれ…!」
とっさに声を出してしまい、慌てて口を押さえたけど私の声は聞こえていないようだ。
声を上げてしまったのは、今入ってきた男性が黒いエプロンを付けていたから。
そのエプロンは紛れもなく、深翠さんと同じものだった。
「木崎(きざき)、美和さんが来た。」
黒いエプロンを着た男性が木崎と呼んだ男性の右肩に手を置く。
「ああ、今行く。お前は平気か?深樹(みき)。」
「大丈夫。アイツは今眠ってるから。」
そう会話した後、2人は部屋を出て行った。
「あの人、深樹っていうんだ…。」
なぜ深翠さんと同じ黒いエプロンなのか、不思議と気になった。
しかし突然、目の前が砂嵐のように灰色になった。
そして瞬きひとつで場面が変わっていた。
今度はさっきのふたりがこの建物のロビーらしき場所にいた。
そして2人の前には女性が1人。