お隣さんの恋愛事情
ギュッと目を閉じ、覚悟を決めた。
が。
男が近づいてくる気配が全くしない。
そーっと、そーっと片目を開ける。
「ねぇ。ここ俺んちなんだけど。人んちの玄関でそういうことしないでくれる?」
いきなり声がして、パッと両目を開け顔を上げると、これまた今まで見たこともないようなキラキラオーラ全開のイケメンがいた。
クソ男の胸ぐらを掴み、物凄い形相で睨んでいる。
不謹慎だとは思いますが。
カッコイイ!!!
とか一人で思ってたら、よほど怖かったのか、クソ男が逃げて部屋から出ていった。
取り残された私は、ずっとイケメンに見とれたまま目を離せずにいる。と、いきなりイケメンがこっちを向いた。
「ねぇ。あんた誰よ。てか、あんたも出て行ってくんない?」
「…あっ…あ、そそそそうですよね!失礼しました~!!!」
目が合って、あのクソ男の気持ちがわかった。
恐ろしい。朝子より恐ろしい。
そう思いながら慌てて玄関のドアを開けようとすると、ドアノブを回し損ねて、思いっきり頭を打った。
「いったぁ~~~~!!!!」
夜というのに大声で叫んでしまい、それでも痛む頭を押さえてその場に座り込んだ。
そしてその瞬間。
いきなり下を向いたせいか、今まで落ち着いていた胸のムカムカが一気に込み上げて。
「……く…」
「あ?」
「…は…く…」