お隣さんの恋愛事情



エレベーターに乗って上に上がっていく途中、欠伸もクシャミも止まらず、私はゼーゼーいっていた。

チーンと音が鳴って、エレベーターから降りて部屋へ歩いていく。


…と。


今一番会いたくない人と会ってしまった。
今日はお局様にも会うし、ツイてない。

下を向いたまま、軽く会釈をして通り過ぎようとすると、すれ違う瞬間声をかけられた。


「おはよ。ゲロ女。」


あぁ。最悪だ。
だけど反論できない私はどうしよう。思わず止めてしまった足が憎たらしい。



「お、おはようござりまする…」



何となく目を見て笑ってみればいいかなぁなんて、おバカで単純な私は顔を上げた。



「あんたさ、顔くらい洗えば?あと、髪スゴいよ。」



冷たい視線とともに発せられた言葉の主は、何を隠そう私が今までの人生の中で、大失態を起こした部屋の住人で。



「仕事休みだからってそんなんじゃいつまでたっても処女だな。」



じゃっ、と片方だけ口角を上げて笑ってエレベーターへ向かう彼は、キラキラオーラ全開のイケメン男。

わたくしは先日、この方の部屋でただならぬ大失態をおかした次第でございます。



< 25 / 121 >

この作品をシェア

pagetop