お隣さんの恋愛事情
エレベーターに乗って上に上がっていく途中、欠伸もクシャミも止まらず、私はゼーゼーいっていた。
チーンと音が鳴って、エレベーターから降りて部屋へ歩いていく。
…と。
今一番会いたくない人と会ってしまった。
今日はお局様にも会うし、ツイてない。
下を向いたまま、軽く会釈をして通り過ぎようとすると、すれ違う瞬間声をかけられた。
「おはよ。ゲロ女。」
あぁ。最悪だ。
だけど反論できない私はどうしよう。思わず止めてしまった足が憎たらしい。
「お、おはようござりまする…」
何となく目を見て笑ってみればいいかなぁなんて、おバカで単純な私は顔を上げた。
「あんたさ、顔くらい洗えば?あと、髪スゴいよ。」
冷たい視線とともに発せられた言葉の主は、何を隠そう私が今までの人生の中で、大失態を起こした部屋の住人で。
「仕事休みだからってそんなんじゃいつまでたっても処女だな。」
じゃっ、と片方だけ口角を上げて笑ってエレベーターへ向かう彼は、キラキラオーラ全開のイケメン男。
わたくしは先日、この方の部屋でただならぬ大失態をおかした次第でございます。