お隣さんの恋愛事情
いつもはパパッと終わる化粧落としも、今日はアイラインとマスカラの厚塗りのせいで時間がかかる。
朝子のやつ、どんだけ塗ったくってんだよ。
ちょっとだけ朝子のスッピンが見たいと思った瞬間だった。
――……
長い長い化粧落としを終え、いつしか胸のムカムカもおさまっていた私はスッキリした気分でリビングへ向かった。
入った時、自分の部屋とは正反対で、これまた私の部屋とは正反対の部屋の美しさを今更ながら知った。
綺麗に片付ければこんなに広いんだな。
今度の休みあたり久しぶりに掃除でもしてみようと思いながら、見当たらない彼の姿を探す。
だけど彼の代わりに目に入ってきたのは、大きなピンクのハートのクッションと、さっきまでホットミルクを飲んでいたマグカップ。よく見れば、彼がコーヒーを飲んでいたマグカップとペアだった。
彼女いるのか。
なんてボーっと考えていると、キッチンから声がした。
「パンダじゃなくなった?」
振り返ってみると、まだ笑っている彼がいて、何となく聞いてみた。
「彼女いるの?てゆーか私今更だけどお邪魔だね!」
何か「彼女いるの?」って一言だけでは変に思われそうで、思ってもないことを(普通にお邪魔だと思うが)慌てて付け足した。