お隣さんの恋愛事情



しばらくして、携帯の存在を思い出し鞄から取り出すと、チカチカとランプが点滅している。
着歴を確認した時、私はすっかり忘れていたことを思い出した。



『じゃあ明日の12時ね!忘れないでよ!』



『あったりまえだのクラッカーよ』




すっかり忘れていた。
携帯には恐ろしいほどの朝子からの着信。あーんどメール。




「どうしよ…クラッカーとか言ってる場合じゃないし…」



だけど、今更外に出て行く気にもなれず、体力もない。とりあえず電話だけでもかけるか。そう思い、怒っているであろう朝子に電話をした。


この、プルルルルっていう音が流れている間って緊張する。いつ切れるのかドキドキしてしまう。


だけどそんなドキドキも、朝子の叫ぶような声で一気にふっ飛んだ。



『恭子?!?!』



「ごめんなさい、悪いのは承知しておりますが、私本日体調が悪く、先ほど携帯を見た次第でありまして、その、すっかりうっかり忘れて家でゴロゴロしていたなんて、そんなことは決してありま…」


『心配した!!!』



朝子にグチグチ言われるのを阻止しようと、弱い頭を精一杯ひねってまくし立てるように喋っていると、微妙に鼻声になっている朝子の声に遮られた。


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