お隣さんの恋愛事情



徒歩1分だと思っていたのに。不動産屋の本にはそう書いてあったのに。


私は勘違いしていた。

自分の足の長さを。

短さを。



しかも風邪のせいでフラフラした足取りで歩けば、それは徒歩5分にもなった。



「あの本嘘ばっかじゃん。誰を基準に書いてんだよ…」



一人ブツブツ言いながら、歩いている間に切れた息を必死で押さえながら薬のコーナーへ行く。

だけど、またもや難関が。




「シロップのタイプ、全部子供用じゃんか…」



はい。わたくし、粉薬飲めません。大嫌いです。錠剤なんて、高校生の時に飲んだ生理痛の痛み止め飲んだ以来です。



「あの~」



とりあえず近くにいた店員に声をかけた。



「風邪薬のシロップタイプってあります?」


「子供さん、おいくつですか?」



「いや、私が飲むんですけど…」



「…」



「…」



「…」



「…」



「ない…ですか?」



「申し訳ありません、うちの店には大人用のシロップタイプの風邪薬は…」



「あ、はい…」



何となく変な目で見られた挙げ句、苦笑いまでされた私は、仕方なく粉薬のタイプを買うことにした。



「絶対苦いよ、コレ。」



アイスに混ぜて飲むべきだと直感的に閃いた私は、そそくさと冷凍コーナーへ移動した。

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