お隣さんの恋愛事情




「正人なんて大嫌い!」



隣の隣から女の怒鳴り声が響いた。ドアをまだ閉めていなかったため、ワイシャツにスーツのズボンを履いて、フリフリエプロン姿のミキ姉にも聞こえていた。
思わずミキ姉のほうを振り返った私は、2人揃って目を合わせて首を傾げる。


次の瞬間、今度はドアを蹴ったらしい大きな音がして、私の目は勝手にそちらへ向く。



「あっ!!!!!」



…っと叫んだ時にはもう既にさっきの女はいなくて。
その代わりに目に入ってきたのは、あのキラキラオーラ全開のイケメン男で。




「何?」




ギロって睨まれました。そりゃもう背筋が凍りつくような恐ろしさですよ。
初めて会った時に見た、あの怖い顔。




「いや、別に聞くつもりとかはなかったんだけど…」



「別にいいけど。」



どうやら相当お怒りの御様子。



そんな最悪な雰囲気を、いとも簡単にブチ壊してしまう、低いんだけど何処か高い声。




「あらぁ~正人じゃない!久しぶりねっ」


だから何でアンタはそうなんだ…って…



「ちょちょ、ちょっと!ミキ姉!その格好で出たら…」



「大丈夫!正人は知ってるからっ!」



両手を合わせて、無駄に腰をくねらせるのは止めて頂きたい。



「幹夫か。お前まだそんな格好してんの?」


「やぁねぇ~!私は一生このまんまなんですぅ~」



だから無駄にくねらせないでよ、と思っている間にも2人の会話は続いている。

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