お隣さんの恋愛事情


待ってろよ、と声を掛けて、従業員専用のドアを開けた。そのまま自分のロッカーまで走り、朝巻いてきたマフラーを取り出した。白黒のチェック。


慌てて手で掴むと、また店内へ戻る。
小さいから何処にいるのか探すのが大変だと思っていれば、先ほど待ってろと言った場所から、一歩も動いた気配のないレッサー。


ソワソワして周りをキョロキョロしている。そんなあいつの姿を見て、思わず笑みがこぼれたことは内緒にしておこう。



「ほらっ」



ヒョイっと渡せば訳がわからないといった顔。首まで傾げている。


「なにコレ。」



「マフラー」



「あんたバカにしてんの?毛糸のひょろ長いものって言ったらマフラーしかないでしょうが。」



「ゴチャゴチャ言ってねーでさっさと巻けよ。」



言えば渋々巻き出すレッサー。

が、しかし。


最近じゃ中学生でも巻かないような巻き方をしている、いわゆるサラリーマン系巻き方で。

いくらこんな女と言えど、洒落た店で働くイケメン店員としては見逃すわけにはいかなかった。




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