お隣さんの恋愛事情



――――……



ようやく仕事も終わり、他のスタッフに挨拶をして店を出る。
冬になれば陽が落ちるのも早いもので、あぁもう12月なんだなと、身震いした。


一人マンションへと足を運んでいると、レッサーの顔が思い浮かんだ。

今思えば、初めて会った時はぶっちゃけウザいが第一印象で。
部屋は間違えて入ってくるわ、玄関先で男と揉めてるわで、その時いた彼女と別れたばかりの俺には、本当にありえなかった。


だけど、何だかほっとけなかったし、これは性分だから仕方ないけど。とりあえず、突き返すようなことはできなかった。

それからは度々顔を合わせるようにもなったし、今まで全然会わなかったのが不思議なくらいで。いつの間にか「ただのお隣さん」ってだけじゃなくなった。


時々、マジで勘弁してとか、マジありえないとかそういうのはあるけど、今じゃ笑えるし、何だかんだ毎日が楽しい。



「………って、何一人で笑ってんだ、俺。」


気付けば頬が緩んでることなんて珍しくもなく、今みたいに周りからみたら痛い人みたいに見られることも多くて、慌てて顔を引き締める。



「………まぁ、いっか…」



さっきのアイツじゃないけど、今は何だかんだ楽しいし、しばらく恋愛とかしなくてもいいな。



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