ビタースイート


知らぬ間に、雨は上がっていた。


雨がやんだ街は、少しずつ賑わう。
その中に、私達もいた。

雨上がり独特の匂いが鼻をかすめる。


「実はさ、明日祐太郎が家に来るのね、だからちょっとお菓子でも作ってやろうと思って」


手に持っていた薄力粉を照れながら籠に放り込む。

スーパーの中は外の静けさとは反対に、雨が上がるのを待っていた客で賑わう。


「またクッキー?」

「ううん、今回はシフォンケーキあたりかな」


アキちゃんは見た目からは想像できないくらい(と言ったら怒られるだろうけど)料理が上手で、女性として憧れる。

だから三ヶ月も彼氏がいない期間があったのが、不思議だ。


スーパーを出ると、外は既に薄暗かった。

夜からまた雨が降るらしかったから、私達はそこで別れた。


私も頑張ろうかな、と黄昏に呟く。



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