ビタースイート


突然、だった。


あの日、スーパーの前で別れてから二週間後、私はアキちゃんに呼び出された。

大雨の中傘もささず、アキちゃんは公園のベンチに座っていた。


「フラれた」

「…え?」

状況を必死に理解しようと、フル回転する私の頭。


「祐太郎さ、あたしのクラスの子がずっと好きで、その子に近付くために、あたしと付き合ったんだって」

初めて見るアキちゃんの涙。
比例して強まる、雨。

「その子と付き合えるようになったから別れてくれって…」

「何それ」


私の中で何かが音を立て、壊れた。


「やっぱり、あたしなんか…」

「…アキちゃん、」

「頭ではわかってた筈だったんだけど…」

「アキちゃん」

「あたし、馬鹿だっ…」

「アキッ!!」


つい、声を荒げる。
アキちゃんは驚いて私を見る。


「アキは馬鹿だ、本当」

「え?」

本当に、馬鹿だ。

「いつものアキなら井上の事、殴りに行ってる」

降っていた雨が弱まる。


「私は、スイートよりビターなアキが好きだから。アキはアキでなきゃ、嫌」

「紗都…、初めて呼び捨てで呼んでくれたじゃん」

そこには、いつものアキがいた。


いつの間にか雨は止んでいた。
要らない想いだけが雨に流れた。




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