ビタースイート


そんな出来事も次の日には忘れ、ついに誕生日がきた。

ここ最近忙しすぎて誕生日自体を忘れていた私は朝、携帯電話に届いていた数件のメールでその事を知ったのだった。

まだそんな年じゃないのに。
思わず自嘲する。


その日は何故かアキが来なかった。
毎日、休憩毎に隣の教室から来てくれていたのに。

風邪でもひいて休んでるのかな?


『まっ、来週の水曜、楽しみにしときなっ』


一週間前のアキの言葉を思い出して少し悲しくなった。

しょうがないよ。
アキにだって都合がある。

自分の心に言い聞かせる。

喉がきゅう、と締められ、何だか寂しい気持ちになる。


とりあえず、お昼は食堂に行こう。

誰も今日が私の誕生日だって知らないけど、大勢の人とご飯を食べたら、なんとなく祝ってもらってるみたいだし。



教室中の生徒達の熱で曇った窓に日付を指で記す。


指が、噛まれたようにじんじんした。




.
< 37 / 44 >

この作品をシェア

pagetop