サクラサク
『星』

手を伸ばせど
伸ばせど届かない
そんな無機質なものに
あなたはなってしまったんだね


仕事なんていつでも辞めていい


そう無理しながら
私との電話を
切らずにいてくれたね


星は私を見ない
星はあなたを戻さない

夏の暑い日に振り向いて
あなたは
「星が見えないね」
と笑った


「夜にならなきゃね」
私が遠くを見ると
「じゃあ夜までいよう」
とクセになった
真剣な顔を
わざわざつくった


あなたがどうして人生を
終わらせようと
考えたのかは分からない

置いていかれたと
怒るほど私は若くない


ただただ
思い出を目をつぶって
コマ送りにするだけ


私は泣かない
泣く資格がない


私は笑わない
それ位年をとった


あの時、星を本当に
あなたは見たかったのだろうか


この世の終わりに閉じたまぶたに
星は映ったのだろうか
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