放課後、いつもの教室にて
魅入られる

*ミイラレル*


「【魅入る】……気をつけて見る。じっと見つめる。また、見とれる……。」

ある教室の一角でしゃがみ込み、うわ言のように繰り返し呟く。もう何回も復唱したせいで覚えてしまったじゃない。

「何やってんのお前、」

背後から掛かった声。それは偉そうに、私を立ったまま見下ろして手元を覗き込もうとしていた。
「うるさいな」
本当に五月蝿い。
「国語辞典で何の意味調べてたの?」
「あんたに関係ない。」
本当のところは関係あるわよ。今まさに、アナタに関することを調べている真っ最中なんだから。

「先生に向かってなんて口きくんだ」
「スミマセンでした先生」
『先生』。私が通う、高校の先生。そう、分かりやすく言うなら、私と彼は『先生と生徒』だ。ただちょっと私が不良で、彼が裏表の激しい人間なんだってことを除けば、至って普通の。
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