放課後、いつもの教室にて


特別棟3階《進路指導室》の資料置き場。

先生は数学の教科担当と兼任で進路指導の補佐役をしている。棟の一番端にあるこの部屋は、位置的に人の行き来が少ない。
ここは相原輝幸という数学教師の、唯一の安らぎの場なのだ。正確に言うなら、本来の彼の。
そして私は運悪く彼の使用人みたいなものになってしまい、仕方なさ半分嬉しさ半分でここにやってくる。

先生にはもう気づかれているだろうけど、私は先生に心奪われていたのだ。魅入られたのだと思う。今はよく分からないけど、それでも今も、多分同じ。

手元の紙に視線を落とす。成績不振者、赤点常連である私のために作られたプリントは、問題数が少ないから毎回手書きだ。
先生が文句を言いながらも作ってくれる、意地悪な問題ばかりかき集めたプリント。本当にいやらしい。
そういえば、先生は絶対に解けない問題を出すのが一番楽しいだとか言っていた気がする。

それから数十分して先生は部屋に戻ってきた。
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