放課後、いつもの教室にて

綺麗だと思った。

それ以外に形容する言葉が見つからなかった。

表現力が乏しいにしても、この言葉以上に彼に似合うものはないと思った。


姿形だけじゃない。そういうことだけじゃなくて、雰囲気とかそういうもの全部が、とても美しくて柔らかいって。

「いじめられて?それとも喧嘩?」

「……からまれただけっ、放して、」

不思議な感覚になって咄嗟に手を払いのけた。彼の手が触れていた部分が、妙に熱い。

「………俺、今年からここに勤めるんだ、」
一瞬きょとんとして、それでも彼は何も言わなかった。そして押し売り業者みたいな変な笑みをのぞかせながら、そいつは私を立ち上がらせる。

「アイハラっていうんだ。担当は数学。宜しくね?」
「もう二度と会いません。」
手を突っぱねながらそれだけ言うと、私は運動場脇にある足洗い場に向かった。
彼のことよりも何よりも、怪我をして擦りむいた所が痛かったから。

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