腐女子ものがたり
 挨拶もそこそこに、PCデスクの後ろにあるコタツに、時恵はノートPCをおいた。
 ちなみに、PC分のスペースは確保してある。
 けっこうハイスペックなパソコンで、ノートなのに、私のデスクトップより強い。
 「これ、今までやった分ね」
 と、時恵にUSBメモリを渡した。
 時恵は、おもに"塗り"と呼ばれる部分を担当している。
 私がPCで書いた絵に、文字通り塗っていくのだ。もちろん白黒が主体だが、表紙の部分ではカラーも塗る。
 「了解!」
 私は線画の部分を集中してやっていけばいい。
 「うおぉぉ」
 時恵が奇声を発した。
 「美緒さん、これヤバス、マジヤバス!テラモエス!」
 「いーから塗って!」
 「うおー、このリョウマ×キンタはヤバス~」
 しゃべりながらも塗りは進んでいるようなので放っておこう。
 私たちが今書いているのは、人気少年誌から出ている"卓球の王子様"の二次創作、もといパロディ18禁漫画(BL漫画…まぁ、男同士で…というやつね)だ。
 自分も好きなキャラクターを好き勝手に、妄想全開で描く。ここに同人活動の喜びがある。
 好きな漫画やアニメが、自分の思い通りのストーリーならいいのに…。
 そんな思いの行きつく先に―――


 無いなら作っちゃえばいいじゃん



 ―――という答えがあった。
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