足跡

「紘兄、ご飯は？」

俺が買ってきたアイスを食べながら、携帯をいじったまま千晶が聞いてきた。

俺は千晶の側に座って武蔵をあやしながら答えた。

「えっ？食ってないよ？」

「んじゃ食う？」

「えっ!?まじ？いいの？」

「♪～」

千晶は携帯をその場において、鼻歌を歌いながらキッチンに向かった。

その場に武蔵をおいて、俺も後を追ってキッチンカウンター横のダイニングテーブルに座った。
武蔵は俺に付いて来て、足元にちょこんと座った。

千晶は相変わらず鼻歌を歌ったまま、コンロに火をかけたり、バタバタと冷蔵庫を開けたりしていた。

千晶に例のモデルを知ってるか聞いてみた。

「超知ってるし!!最近超出てんじゃん。てか超可愛いし!!」

やっぱり…
若い子には人気なんだな。

「何で？紘兄も好きなの？」

「違うよ。今度うちで作るCMに出んの。」

「えっ!?マジで!?え～!!超いいなぁ～あきも会いた～い!!はい。」

そう言いながら、準備のできた夕ご飯をカウンターに置いていった。
麻婆豆腐やら中華風のサラダやら何種類ものおかずが出てきた。

「これあきが作ったの？」
受け取りながら尋ねた。

「そうだよ。その煮物は紘兄の家からもらったけどね。」

そう言いながら、麦茶とご飯を持って俺の向かいに座った。

「はい。」

「サンキュー。いただきます。」

千晶は料理が好きみたいで、小学生の頃からうちの母ちゃんの手伝いをよくしていた。
そのせいか千晶の作る料理はどこかうちの母ちゃんが作るものに似ている気がした。