足跡
高原はトイレから戻って来ると、今度はコーラを注文した。

「お前、意外と酒弱いよな。」

「そうなんすよぉ。紘平さんも正さんも強すぎなんですよ~」

正(まさ)さんは石黒のことだ。
下の名前が正人(まさと)だから、正さん。


「で、合コンで弱いのに酒飲んじゃって、ついついヤりたくなっちゃって、ヤっちゃったのか?」

「えっ…?」


高原は驚いて素っ頓狂な声をあげた。


まじかよ…。
もしかしてとは思ったけど、図星かよ。

「まじで?」

「…何でわかったんすか?」

「わかるよ。で、いつの話だよ。」

「6月の末…いや、7月の頭…くらいっすかね?」

こいつは…


「てか紘平さん、怖いっすよ!!刑事になれますよ、それ!!」

高原は興奮して言ってきた。

「アホかよ。そんなん、別に俺に相談するまでもなく、連絡来なくなった理由わかってんじゃねえかよ。浮気がバレただけなんじゃねぇか!!」

俺は少し苛ついていた、ぶっちゃけ。

高原のしたことも、今の高原の女々しい態度にも。

「何でバレたんすかねえ…?」

「知らねえよ。バレたことがショックなわけ?なら、バレなければよかったの?」

「まぁバレないことにこしたことはないかと…」

呆れるは、こいつ…

「じゃあさ、何でバレたの?」

「それがわかんないんすよ~。絶ッ対にバレない自信あったのに!!」

「何なんだよ、その自信は…さっきからバレたのバレないの言ってるけどさ、まずは自分がした行動を反省するべきじゃねえの?」


てか、な~に熱弁しちゃってんだ、俺。

「紘平さん…」

今にも泣きそうな高原が聞いてきた。

「なんだよ。」

俺はちょっと迷惑そうな表情で聞いた。

「まじで、ぶっちゃけ聞きますけど、本当に浮気したこととかないんすか?」

「ないよ。マジでない。千景以外とはヤったことない。」

高原はちょっとだけ考えて続けて聞いてきた。

「じゃあ失礼ですけど、すんげえ失礼だと思うんすけど…」

「何?」

失礼覚悟で聞くんだから、相当な質問なんだろうな。

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