足跡

運ばれてきたワインで乾杯をし、料理を食べた。
姉ちゃんがタイミングを見計らって、
「はい。お母さん。これ、私と紘から。」
と、来る前に買ったプレゼントを渡した。
「あら~ありがとう。何かしら?」
と言って、中身を確認した。
「見て!!お父さん!!素敵じゃない?」
母ちゃんは少しはしゃいで親父にそのハンドバッグを見せた。

「お父さんからは何もらったの?」
姉ちゃんがパスタをくるくるとフォークで巻ながら、母ちゃんに聞いた。
「えっ?お父さん?」

母ちゃんはなぜか勿体ぶって教えてくれなかった。
俺も親父が何をあげたかは気になった。

「今年は誕生日と結婚記念日を兼ねて2人で旅行に行こうかと思ってるんだ。」
口を開いたのは、親父だった。

「え~!!いいじゃない。行ってきなよ!!で、どこに行くの?」

姉ちゃんは興味津々だ。

「まだ決めてはいないけど、ヨーロッパの方にしようかと思ってて。ね、お母さん。」

「そうね、私はスペインがいいかなと思ってるんだけどね~」



スペイン…
そう言えば、前に千景が行きたいみたいなこと言ってたような…
そんなことをぼんやりと思い出しながら、ワイングラスを見つめていた。

< 44 / 58 >

この作品をシェア

pagetop