足跡
結局、雄一は仕事で来れなかったが、4人だけで盛り上がった。
酒もかなり飲み、充は完全に潰れてしまった。

また近い内に会う約束をして、その日は夜中の3時すぎに解散した。
みんながきちんと家まで帰れたかは知らないが、俺はきちんと意識もあったし、風呂に入り、4時頃床に就いた。


翌朝も目覚めたのは昼近くだった。
さすがの俺も飲み過ぎたのか、少し頭が重かった。
フラフラとリビングに降りて行くと、何だか賑やかな様子だった。

「あっ。酔っ払いがやっと起きてきた。」

母ちゃんが武蔵を抱いて、俺に向かって言った。

「ヒロシたちと飲んだんだって?いいなぁ~あたしも行きたかった~」

と何故か千景もいた。

「何でちかがいんの?」

俺は一気に目が覚めた。

「何でってお土産。」

えっ?ばあちゃん家じゃねぇの?

「おばあちゃんと箱根に行ったんですって。」

そう言って、母ちゃんはキッチンへ行ってしまった。

俺は千景の横に座って尋ねた。

「箱根?」

「そう。おばあちゃんと温泉行ってきたの。で、お土産。」

そう言って饅頭やら抹茶のお菓子やらを出してきた。

「朝帰って来たの?」

「そう。紘平が休みだって言うから。」


何だよ~。
だったらちゃんと朝から起きてどっか連れて行ったのに!!

「紘平、あんたご飯は?」
呑気な母ちゃんがキッチンから帰ってきた。
手にはお盆に乗せた、コーヒーやらお茶やら葡萄やらを持ち、足元には武蔵がぴったりと寄り添っていた。

「あ~いらない。てか食えない。」

「どれほど飲んだの?紘平がそんなになるの珍しいね。」
千景が少し心配したような、物珍しそうな感じで聞いてきた。
そんな千景を見てあることに気がついた。

「ちか、髪切った?てか髪染めた?」

「うん。よく気付いたね。毛先だけ切って、少しだけ暗くしたんだけど…」

それは本当に微妙な変化だった。
自分で言うのもなんだけど、よく気付いたな。俺。

「何で?」

「はっ?何でって髪切るのに理由必要?」

「いや、別にそう言うわけちゃうけど。」


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