足跡
電車の中は冷房がガンガンにかかっていた。
ラッシュのピークは過ぎたのか、俺が乗った車両はそんなに混んでいなくて、運良く座って行くことができた。

くたびれたサラリーマン。

ウトウトしているOL。

楽しそうに会話をしているカップル。

塾帰りの小学生。


会社から家までは乗り換えが一回あって、だいたい40分くらいの距離だ。
俺は特に何をするわけでもなく、ただなんとなく周りの奴らを眺めていた。

俺の前に座っているカップルは手を繋いだまま、携帯を見て何か話し合ったり、時々目を合わせて笑い合ったりしていた。
大学生くらいかな?


そんなカップルを見ながら、前に千景と手を繋いで出掛けたのはいつだったか考えていた。

ん?
いつだ?

まじで覚えていない…

何だか切なくなるな。
俺が忙しいからしょうがないか。

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