ジレンマ
15歳
武川先輩
夢見がちな少女だったあたしが、小学生の頃いじめられていたのは当然だったと思う。
両親共働きの一人っ子だったから 一人遊びに慣れすぎていた。
そして必要以上に自分の世界観を強調する性格だったから…同世代の、特に男の子からすればなんともうっとうしかったのだろう。
父は稼ぎの少ないジャズミュージシャンで、母は保険のセールスレディだった。
二人のそれまでの人生は知らない。
中学に上がって両親が離婚してからの父の事なんかもっと知らないけれど、父は父であたしが中学で登校拒否になった事なんか知りもしないだろう。
中学に上がっても小学校からのいじめは終わりを知らず、否定され続ける毎日に疲れたあたしは家にこもったまま自殺を考える事も多かった。
もともと夢見がちなせいで、いつまでも王子様を待っているふしがあったから、男の子にいじめられて一人で抵抗するたび
「あたしには漫画みたいにかばってくれる王子様はいないんだな」
と余計に傷ついたものだった。
今思えば、無駄に自分や環境への理想が高いから傷ついていたのだけれど。
ともあれ学校に行かなくなって気は楽になったけれど、当然成績は落ちた。
もともと感性だけで学校のテストをクリアしていたから、努力を知らないあたしはあっという間に並以下の落ちこぼれだった。
あたしの登校拒否と同じくして体を壊した母の財布も考えれば、入れる高校なんて1つしかなく、あたしは最低ランクの北高になんとかしがみついた。
高校生になった時にはもう、自分に対して自信や希望は無かった。
けれどあたしはこの高校で、初めての彼氏と出会う。
まだ、幸せは知らない。