F
気がつくと電車の中にいた。
別に家出する訳じゃない。
ただこのどうしようもない感情を、
頭の鈍痛を消すために…。
地元の一時間に二本しかない電車。
今まで乗ったことがないからどこに行くのか分からない。
タイミングよく電車の到着五分前に駅に着いた私は
とりあえず終点までの切符を買った。
停車駅を確認してみたけれど終点の駅の名前しか知らなかったから。
ホーム……といっても屋根もない。
まさにド田舎のホーム。
わたし以外に電車を待っている人なんていなくって、
やってきた電車にも誰も乗っていない感じだった。
ひとりの車両っていうのは、ちょっぴり怖くって
そうじゃなくてもぐらついていた私の心にはキツかった。
選択を誤るってこういうことだ……
でもちょっとおもしろかったことがある。
窓から見える山。
しかもどんどん深くなる。わたし、どこいっちゃうんだろって思った。
もっと、とにかく遠くに行くんだ私。