素直になれたら
校門は多くの生徒達で賑わっていた。赤や黄色の頭が目に付くけど、そんなのは入学当初から見てきた姿なのでもう当たり前だ。


「おはよー」


と数名の教師が朝の挨拶運動に励んでいて、気持ちのいい生徒が

「おはようございます」

と元気に返し、私はその横を敢えて目を反らしながら素通りする。

別に面と向かって挨拶されたら普通に返すけど。常識として。でもこうも登校で賑わう生徒が溢れてる中で、進んで挨拶するのは何か嫌。

無意識にでもそんな下らないことを考える私はホントにガキだ。


…とその時、足が止まった。


「…………………。」


ホントやめてよ!馬鹿じゃない?


今私は後ろから軽く抱き締められている…。


「おはよ、美嘉」


私は両手を払う。他の生徒の視線が痛い。

「てかそうゆうことやめてくんない?」

「なんで?イイじゃん別に」

してやったり的な皮肉な笑みをしたそいつ、川崎翔を私は睨み付けた。

「おっ!!怖」

「何?」

「何って…教室まで一緒行こうぜ?」

そう言って翔は私の左手の指に手を絡めてきた。…ったく。私はその手を払う。二度目。

「朝からそうゆうテンションやめてくんない?手ぇ繋いで登校とかやってないんだけど」

そう言い放って教室に向かった。付いてくるかと思ったけど、私が早足すぎたのか、彼がトボトボ歩いてるのか分からないけど、下駄箱に着いた時には翔が来る気配はなかった。


…あの馬鹿…


教室に向かう途中で何回か溜め息が出た。
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