素直になれたら
教室に入ると、いつもの如く、賑やかな声で溢れかえっている。


私が教室に入る頃にはクラスの大半は集まっている。単に私がいつもぎりぎりな訳。

黒板の上の時計は8時25分を指していて、後5分でHRが始まる時間。

朝に弱い私は家を出るまでに人一倍は時間が掛かると思う。アラームは一応7時にセットしてるけど、結局何度目かのスヌーズで起きるため、15分か20分くらいになる。

それから歯磨きとか化粧とかしてるとあっという間に8時になってるし…。とにかく睡魔と時間のせいで、イラつきに拍車がかかる。大抵はこんな最悪な感じで私の一日が始まる訳。

とにかく、今日もそうだった。

そんな思いに耽ってるうちに翔が入って来た。

「おっ翔ちゃんおはよ〜。超ギリじゃね」

「ああ…」

私に負けないくらい不機嫌そうに生返事をして、ぶっきらぼうに席に座る翔を見て妙にイラっと来た。



2時間目の休み時間にゆりが来た。ゆりとはクラスが違うので、今日初めてゆりの顔を見る。

「美嘉おはよ〜」

「おはよ」

「ねぇなんか翔元気なくない?さっき廊下で見かけたけど」

「さぁね」

「なんかあったの?」

私の態度も察してか、ゆりは少し楽しそうに勘ぐってきた。

教室中を目で追い、翔が居ない事を確かめる。

「いやぁ別に…?朝っぱらから抱きついて拒否られたからじゃない?」

「えぇ〜?美嘉にぃ?」

「そっ」

ゆりは軽く吹き出した。

「でも傷付くぅ〜」

「………」

「てゆうかさ、美嘉ひどいよ〜。翔ってアンタの彼氏なんだからもっと大事にしないと」

「でも朝から手ぇ繋ぐのはヤダよ」

本音。そこまで愉快な人間にはどう考えてもなれそうにない。

「…んまぁ仕方ないね」

そう言うゆりはさっきまでの楽しげな笑みより、苦笑に近い笑みを浮かべていた。

そいやゆりは今彼氏の勝希君と喧嘩してるんだっけ……ちょっと考えなしに言っちゃったかも。

「ねえ、良かったら今日も『フレッシュ』行こうよ!!ゆり今度はクレープシュゼット食いたいの」

「うんオッケ」

心の中で手刀を作った。ごめんね、ゆり。
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