君がタメ
ヒロ: なぁ。サヤ
飯おごるよ!何食いたい?
…と微笑む


サヤ:えっ!?… ご飯?

ご飯は…いいや アハハ


ヒロ:なんで?お腹一杯?


サヤ:えっと、
私…
外食は…できない…


俺はこれ以上聞くのを止めた
何か悩みがあるって言ってたし

もしその事だったら…

せっかく楽しんでる今は
とことん楽しんで欲しかったから…


ヒロ:じゃーCD見に行こうよ!
新譜とか見たいしさ!


サヤ:うん…いいの?


ヒロ:いいよ!行こう!


手を差し延べたけど
この時のサヤはまだ

手を握ってはくれなかった

CD SHOPに着いた俺達は

同じ趣味である音楽の話題で

歳の差を感じる事無く楽しく過ごす事が出来た

そして帰る時間が近づいて
駅前のちょっとした広場で
話しをしていた時の事…


サヤ:あの… 私ね 人と外食する事が出来ないの


以前外食先でヒキツケ起こして
他人に迷惑かけた事があってね

…それからなの

私、ヒキツケの一件があってから鬱病になっちゃって…

生きる事に必死なの

薬も飲んでるし…

時々自分を傷付けちゃう事も…

そういってサヤは自分の右手首に刻んだ痛々しい切り傷を

涙をこらえて見せてくれた
サヤの口から不意に出た言葉だった

何で会ったばかりの俺にそんな話しをするのか?

疑問でしょうがなかった…

理解に苦しむ…でも


…でも心の底から嬉しかった

俺はサヤの手首に手をあて
ヒロ:話してくれてありがと。

そう言って
その日はサヤの涙を拭い

また会う事を約束して

駅の階段を昇って行くサヤを笑顔で見送った

あの時…

音の鳴る暗闇で見えた
傷ついた手首

聞けなかった事がわかった…
俺はこれからどうしたらいいだろう…

俺はサヤに何をしてやれるだろう…
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