番外編 芦原大成の災難
災難の災難
『っし、カンペキ』
芦原大成は鏡の前に立ち、自分の服装をチェックした。
グレイ地に白のストライプが入った細身のスーツ。
自分が持っているスーツの中では一番高くて一番派手なものだ。
それに今日はノーネクタイで。
髪もワックスで今風にボリュウムを出し、テレビCMで見た香料スプレーも満遍なく振り掛けた。
普段の仕事とは力の入れ方がまったく違う。
それもその筈。
今日は仕事の先輩である神山のセッティングで、女の子を紹介してもらうことになっていた。
齢二十七歳、ここ三年彼女らしい彼女がいない芦原は、朝からウハウハだった。
『神山先輩も優しいとこあるなぁ』
芦原はしみじみと言った。
しかし、それと同時にこれくらいは当然のこと、とも思う。
何故なら。
話は一週間前に遡る。