番外編 芦原大成の災難

きゃああああ。


店内の客が気付いて悲鳴をあげた。


マズイ。撃たれる。


さっきからダラダラ汗が流れる。




『芦原どうした?』

神山が問い掛けるが、答える訳には行かない。


自分で何とかしないと。


芦原は相手を見つめ目を合わせた。呼吸を整えて、相手の呼吸に合わせる。

タイミングを見計らえ。

チャンスは一度きりだ。


冷や汗が頬を垂れる。




『きゃあ。芦原さんっ』

女の子達が叫ぶ。

男がそれに僅かながら反応した。



今だ!



芦原は右手で相手の手首を掴み、拳銃を反らして上に向けた。


この建物は鉄筋コンクリート造。天井で弾は止まるだろう。


そこまで考えてから。


ガンッ、ガンッ、ガンッ。
芦原は天井に向けて無理やり弾を撃たせた。



『きゃああああっ』

店内に悲鳴が響き渡る。

内装が崩れて誇りが舞う。
照明が割れ、ガラスが飛び散った。


ガンッ、ガンッ、カチャッ、カチャッ。


やがて弾が切れた。


『銃刀法違反の現行犯で逮捕する』

芦原は相手を床に伏せさせようとした。



しかし。



力負けだった。

男は体を翻し、後ろから芦原を羽交い締めにした。

そして、手に持っていた拳銃を捨て、新たに小型の拳銃をズボンのポケットから取り出し、芦原のこめかみに銃口を押しあてた。


『邪魔しやがって』


耳元で男が低く囁いた。





……あぁ。最悪の合コンだ。


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