番外編 芦原大成の災難
……しまった!
『バカか、お前何言ってんだ?』
焦る芦原に松本が小声で突っ込んだ。
『ごめーん、こいつ合コン半年ぶりだから緊張してんだよ、なぁ』
すかさず浜崎が笑顔でフォローする。
『ごごごごめん、ちょっと考えごとしてて。似合ってる、かわいーよ』
女の子達は一様に胡散臭げな顔をしたが、すぐに気を取り直す。
『皆さん、二十七歳なんですよね?私達幾つに見えます?』
真ん中の女の子が聞いてきた。
いくつだろう?社会人だから二十代は間違いないが、なかなか難しい。この世代は一歳でも上に外すと機嫌を損ねる。
ここは安全牌で。
『にじゅう……』
『おい、歳は幾つくらいだ』
神山の質問が飛んでくる。
『三十代後半っすね。肌が浅黒いっす』
『……………』
『ぶはっ』
浜崎が吹き出した。
『ごめんごめん。吹いちゃった』
『お前、何やってんだ。ははは』
浜崎と松本が、体を張った捨て身のフォローで話を無理やり反らす。
女の子達はまた一様に胡散臭げな顔をした。
『証言と一緒だ。間違いない。
そっち行くから、なんか動きあったら知らせてくれ』
無神経な神山の声がいつまでも耳に残っていた。