この手でどうか…
「病弱じゃないって事は、寿命は長いだろう。
しかしこのまま縮めさせる訳にも行かない。けれど……準備はすぐに出来たとしても、だ……」


すぐには呪いを解く事が出来ないのには理由があった。準備が必要だ、というのももちろんある。

また、来てすぐに“今からやるからすぐに覚悟を決めろ”と言う無理強いを、

呪いが発動した本人に強いる事は難しい。


「オレの事を気遣っているなら無用だよ。準備が出来たらすぐにでもやってもらって構わない」

「ウィルド、聞いていたのか」


クッキーを焼き終えたのだろう。リセの話を聞いていたウィルド本人が現れた。

意外にも彼の精神面は強いようだ。しかしそれをリセが許さなかった。


「リセ君はね、寿命が迫っていないだろうと言う相手には、気持ちを整理する時間を一日与えているの。
三ヶ月を無駄にさせてしまうのは申し訳ないと思っているけれど、
気持ちの整理や覚悟が決まらないままでやるよりはマシなんだって」

「だからセレンは黙って……」


なかなか何も言わないリセを見兼ね、セレンが言葉を発するとウィルドは優しく笑って言って見せた。

“それがオレを救ってくれる人の命令ならば、それに従うしかないな”と。
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