奴のとなり
何となく、沈黙が続いた。
ナナミさんは仕事中だから、
グラスを磨いたり、カウンターを拭いたり忙しそう。
でも、
あたしはもちろん暇だから、
そんなナナミさんを観察するぐらいしか出来なかった。
あまりにも観察するものだから、
途中で
「そんな見られると照れるな」
と恥ずかしそうに笑っていた。
そんなナナミさんも素敵だった。
ふと、
ナナミさんの動きが止まって、
視線がぶつかる。
「桜ちゃん。こいつのこと何て呼んでる?」
「うーん・・・、
一樹桃矢とか、ご褒美で桃矢とか、
心の中では奴とか・・・、
いろいろかなぁ」
「はははっ!!桜ちゃんってかわいいな」