奴のとなり
こんなにあたしは悩んで脅えているというのに。
頬を膨らませ、むすっとした顔をしていると、
ナナミさんに頬を摑まれ空気を抜かれた。
ぶしゅー
3人しか居ない空間に、間抜けな音がやけに響く。
奴は一瞬こちらに目を向け、すぐに視線を背けた。
何よ・・・。
言いたいことがあるなら言えばいいのに。
あたしはナナミさんが用意してくれたジュースを両手に、
奴の席の向かいに座る。
奴はやっぱり視線を一瞬向けるだけで、
逸らして窓の外を見てる。
本当は何を見てるか分かったもんじゃないけど。
こっそり手に持っていたジュースの片方を奴に差し出した。
林檎と蜜柑。
もちろん林檎はあたし。