奴のとなり
その視線が
あたしの胸の中をちくりと刺す。
何なんだろ・・・。
わからないけど、苦しい?
奴は
どかっとあたしの横に座ると、
頭をがりがりと掻き乱した。
「一樹桃矢?」
声をかけても反応はなくて、
ただぶすっと座ってる。
もうどうしていいのか分からなくて、
あたしも黙り込むしかなかった。
その沈黙に耐え切れなくて、
「トイレ行ってくる」
、そう言ってベンチを離れる。
トイレは池の反対側だから、
すぐだし、
ちょっと時間を置いたら何か変わるかも。
置いてきちゃった小悪魔さんには悪いけど・・・。
ゆっくりトイレして、
ゆーっくり手を洗って、
ゆーーっくりお手洗いを出る。
二人のところへ戻ったとき、
あたしはあと少しなのに
足が止まってしまった。
目に見える二人は変わらない。
でも・・・。