奴のとなり



その視線が
あたしの胸の中をちくりと刺す。



何なんだろ・・・。



わからないけど、苦しい?



奴は
どかっとあたしの横に座ると、
頭をがりがりと掻き乱した。



「一樹桃矢?」



声をかけても反応はなくて、
ただぶすっと座ってる。



もうどうしていいのか分からなくて、
あたしも黙り込むしかなかった。



その沈黙に耐え切れなくて、


「トイレ行ってくる」


、そう言ってベンチを離れる。



トイレは池の反対側だから、
すぐだし、
ちょっと時間を置いたら何か変わるかも。



置いてきちゃった小悪魔さんには悪いけど・・・。



ゆっくりトイレして、
ゆーっくり手を洗って、
ゆーーっくりお手洗いを出る。



二人のところへ戻ったとき、
あたしはあと少しなのに
足が止まってしまった。



目に見える二人は変わらない。



でも・・・。










< 199 / 555 >

この作品をシェア

pagetop