奴のとなり



やばい・・・。



もう逃げ出せない。



心はむちゃくちゃなのに、
妙に冷静で、
自然と足は二人のところに向かってた。



何はなしてたんだろって、
すごーく気になるけど、きっと聞けない。



「行くぞ」



奴の低い声があたしの耳に入ってくる。



いつもは結構好きな声だけど、
今日はイラつく声にしか聴こえない。



動かないあたしの手を掴むと、
返事も聞かずにずんずん奴は歩いて行く。



小悪魔さんに挨拶しなきゃ、
って思うけど声が出なくて、
彼女の顔が見れなくて、
あたしはただただついて行く。



ぎゅって手が摑まれてて、痛い。



ぽろって涙が零れたけど、
奴は前を見ていて気づいてない。



よかった。










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